神々が眠る山 羊蹄山
日本百名山のひとつとして数えられる、羊蹄山。標高は1.898m。洞爺国立公園に属するシンボリックな円錐型の成層火山です。活火山に指定されていますが、火山活 動が確認されているのは 約6千年前。1912年、 日本にスキーを伝えたレルヒ中佐が登頂して以来、冬はバックカントリースキー、夏は登山客が全世界から訪れています。最も美しいとされる初夏の山容は全国各地の富士の別名を持つ山々の中で最も富士山に近く、そびえる絶景はまさにカムイの作り上げた芸術品。また豊かな自然が古より誰にも荒らされず守られており、神々が愛する聖域が如く感じさせます。
別名・蝦夷富士と呼ばれ、日本百名山にも指定されている麗峰・羊蹄山。羊蹄山には川がひとつもなく、そのため熊や鹿などの獣が住んでいません。「全て、神がかったコンディションで保たれている」と語るのは、18年前から山小屋を経営し、自然保護監視員として羊蹄山を見守り続けている近藤さんです。
羊蹄山で一般の人が登山を楽しむようになったのは、昭和の初め頃。現在、羊蹄山では70種にも及ぶ高山植物が天然記念物に指定され、9合目は全てが指定されている区画。原種に近い状態を保つ草花は特有の色彩がとても鮮やか。神に守られてきた場所だからなのでしょう。
「一度撮影に行くと、千枚以上シャッターを切る」と話す、有村さん。27年以上に渡ってファインダーを通し、羊蹄山の美しさを伝え続ける写真家です。「1日たりとも同じ風景はなく、史上最高の作品を写し続けられる」と言います。
羊蹄山が最も美しい時間帯は、朝露が輝き始める日の出前の30分間。また、21時以降に見られる満天の星空との共演です。特に夏場は天の川が、羊蹄山の頭上を飾りたてるよう。見る角度によっても羊蹄山は違う表情と印象を抱かせ、ニセコ方面からは特徴的な山頂の造詣から、王冠を頂いた女性のように。 倶知安方面からはゴツゴツとした山肌が男性的なイメージを感じさせ、京極方面からは若く精悍な好青年の印象を。真狩方面からは柔らかく母のような山容です。羊蹄山は場所や時間によっても印象を変え、魅了し続ける地上に残された聖域なのです。
羊蹄山のふもとに数多く湧き出る清水は全て、遥か70~80年前に蓄えられてきた雪解け水。ミネラルが豊富で夏でも冴えわたる冷たさを誇り、羊蹄山の非常に水の浸み込みやすい特性が生み出した地下水脈による恵みです。また周辺の湧水は場所によっても持ち味が変わり、京極町の湧水はスキッとした口当たりの冴えた飲み口。真狩村の湧水は柔らかく、しっとりとした味わいです。それぞれの湧水スポットには札幌で飲食店を営む料理人も多く訪れており、こだわりの湧水で味わうコーヒーは格別。中でも京極町の湧水は昭和初期から特別な水として認められており、祀られている不動明王や三十三観音像がパワーを感じさせます。
羊蹄山の名で親しまれていますが、本来は後方羊蹄山(シリベシヤマ)が正式名称。道内にはアイヌの人々が夫婦山として考えていた山々が多くあり、羊蹄山もそのひとつ。羊蹄山はマッネシリ(女の山)で、ピンネシリ(男の山)は尻別岳にあたります。そのため羊蹄山は女性に与えるパワーが強く、魅力や気品を高めてくれるという噂。またニセコを訪れるアジア圏の人々には、日本全体を龍と例えた際、目に当たる部分に羊蹄山が位置していると見たり、風水で羊蹄山は龍穴のある龍脈ルートにあたるともいわれています。
マッネシリ(女の山)とピンネシリ(男の山)は道東にもあり、雌阿寒岳・雄阿寒岳も夫婦山のひとつ。阿寒湖畔もまた龍の住むパワースポットだといわれており、どちらも自然の宝庫で貴重な天然記念物があり、豊かな水源地であることが共通しています。
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