北海道の軟石文化を訪ねて
北海道の街を巡ると、風情ある石造りの倉庫などを見かけることがあります。特に小樽運河では石造りの倉庫群が建ち並び、歴史的情緒を感じさせます。これらの建物は多くが軟石を積み上げたものです。キッカケとなったのは支笏火山噴火により約4万年の歳月をかけて形成された石。2018年に「札幌軟石」として北海道遺産に認定されたものです。発見以降、北海道全土に建築資材として分布し、各地で石を採掘し始めるキッカケとなった軟石の軌跡を辿ります。
札幌の情緒ある景観を生出している石造りの建物。それらの多くは札幌軟石という石材でできています。札幌軟石という言葉に聞き覚えがない方も多いでしょう。なぜなら2018年に北海道遺産に認定されたばかりの新しくも古い魅力的な意思なのです。では札幌軟石とはどんなものなのか。北海道遺産認定に深く関わり、札幌軟石を語る会の活動を行う佐藤俊義さんに特徴や歴史についてお聞きしました。
札幌軟石は約4万年前に発生した支笏火山の大噴火によって形成された石材です。後に支笏湖を生み出すほどの噴火によって発生した火山灰や軽石などを含む火砕流は苫小牧、千歳、札幌南部へと流れだし、堆積したものが歳月をかけて石化。明治初期に札幌南区(旧穴の沢)で発見されることとなります。札幌軟石は他の石材に比べ、低い硬度、高い断熱性を耐火性があります。火災に頭を悩ませていた開拓使にとっても最適な建築資材だったのでしょう。明治12年には石造りの住宅建築を行ったものに建築貸与制度が定められたという記録も残っています。開拓方針として奨励されたことで、明治14年の5万7千才(1才=一辺が約30センチの立方体)という採掘記録以降、多くの建造物に活用されていきました。特徴的なのは、そこから全道へ普及していったこと。遠い十勝でも札幌軟石を使った倉庫が残されており、広がりの一端を感じることができます。普及は各地域独自の軟石採掘にもつながったものも多く、分かっているだけで独自の軟石は十数種類。色も材質もさまざまです。また、コンクリート造の台頭により衰退していった各地の軟石に対して唯一、札幌南区の辻石材工業(株)で採掘され続けているのも札幌軟石です。現在では意匠材としての価値が見直され、店舗の内装などに用いられる事例が増えてきています。「札幌軟石を知ったのは、15年間に藻南公園の設計がキッカケです。地元の人たちに話を聞く中で石切職人の方に出会い、文献などを読み込むうちにどんどんとハマっていきました。札幌建築観賞会の活動で道内各地にも軟石建築があることが分かり、北海道独自の文化なんだと多くの人に知ってもらいたくなったんです。札幌軟石は空気を多く含んだ石なんですね。だから軽くて保湿性も高い。昔から札幌には玉ねぎやりんごの倉庫などが建ち並んでいて、その多くに軟石が使われてきました。倉庫や蔵を石造りにした例は多く、大事なものは軟石に閉まっておくという意識だったんでしょう」と佐藤さんは話します。
現在も採掘され続けている札幌軟石の普及に貢献している雑貨店「軟石や」。札幌軟石の端材でミニチュアハウスのアロマストーン(ディフューザー)を制作販売しています。代表の小原恵さんにお話を伺いました。
「幼い頃から石造りの建物は好きだったんです。親族が辻石材工業さんとご縁があり、話を聞くうちに札幌軟石のトリコになっていきました。2年間同社で働き、もっと色々な人に知ってほしいと雑貨店を始めることにしたんです。全て手作業なので大変ですが、雑貨から石山地区を知るキッカケになればと思っています。石山地区のマニアックな魅力で、暮らしたいと思う若い人が増えると嬉しいです」。軟石やは2019年よりぽすとかん(旧石山郵便局)へショップを移転。歴史的建造物が活用されながら残る仕組みに取り組んでいます。
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