ISOは、まさにP・D・C・Aの実践です。
私は、平成十年にISO9001の認証取得の支援でコンサルタントとして採用され鶴雅・花ゆう香・サロマリゾートとそのオープンと共に順次認証を拡大するお手伝いをさせていただいております。
実は大西社長とは、高校での同級生で、札幌の大西社長の家に遊びに行ったことがあります。そのころから音楽は彼の趣味で、好きな曲について話をしたことを覚えております。彼は高校生活をまじめに過ごされたので東大への道を歩まれましたが、私は、挫折した口で、二十数年ぶりの久しぶりの同窓会で、顔を会わせたのが縁となりました。
その当時、すでに鶴雅は、全国でも名の知れた旅館でしたが、大西社長より「指示したことがなかなか守られない、実施されても定着しない」ということからさらに上を目指したいということを私に話され、それならばISOはどうかと提案し、今日に至ったわけです。ISOは、製造業では当たり前でしたが旅館業界にはまだ全国でも数例しかなく、北海道ではまだ認証旅館がない時でした。
しかし、いち早く決断をしていただき、鶴雅グループの管理の基本になっているものと思います。初めて鶴雅にお邪魔した時は、さすがJTBアンケートで80点以上を常にマークしている旅館だと感心したことを覚えております。PHSによる社内連絡、モニターカメラによるコントロールなどなど、別館客室に代表されるハードのすばらしさを内側から支えるシステムが確立されておりました。それにもまして従業員皆さんすべてのお客様への笑顔と心からのおもてなしがありました。
しかし、社長は鶴雅に展開されているこれらの活動を当たり前に、すべての人がいつでも実施できることを目指し、ISOに取り組もうと決断されたわけです。
確かに、いろいろとお話を伺っていくとサービス業の特徴である一人ひとりの従業員の能力に頼っていることがあるようで、システムで動くことが必要でもありました。
ISOの取り組みを振り返ると、現在の本部長クラスの方々がまだマネージャーで、特に千葉本部長(当時接客マネージャー)には、ISO事務局としてがんばっていただきました。ISOの一番面倒なサービスの文書化というテーマには、本当にご苦労されたと思います。また、その千葉マネージャーの指示で、自部署の仕事を手順書にまとめていった各マネージャーにも本当に大変だったと思います。
今現在、三つのホテルへの導入展開をさせていただき、皆さんから「ISOがあるからこそ、これだけの規模になっても何とかまとまっているよね」とお話していただけることが、ISOをご紹介したコンサルとして喜びがあります。
ISOは仕事の考え方、管理の考え方を組織に定着させるものだと思います。それは、私が常日頃お話しているPDCAです。P(計画)D(実行)C(報告・記録)A(対処・改善)は、管理手法として言い古された言葉でもありますが、なかなか実践できないことです。サービス業は、D(実行)に主眼が置かれ、どうしてもその場対処、そこにいるお客様への対応が重視されますが、なぜそうなったのだろう、どのくらいそのことが発生しているのだろうという検討がなかなか行われません。現場の事象がなかなか表には現われないということです。
今この原稿をある旅館で書いております。ここは道外の旅館ですが、全国的にもたいへん有名な旅館ですが、そもそも客室に宿泊アンケートすらありません。従業員の方々もすれ違っても挨拶をしてくれる人は十人に一人ぐらいでしょうか。暖房が入っていない無料休憩コーナー、鶴雅が当たり前になっている私にとっては、本当にここは全国でも有名な旅館かと目を疑うばかりです。いつもの癖で客室や館内をいろいろとチェックしてしまいました。鶴雅の皆さんには、このチェックは小姑のようで毎度申し訳なく思っていますが、やはり実際泊って食べてみないと解らないことが多いですから、今後も続けて行きますので、ぜひ前向きに改善に取り組んでください。
さて、鄙の座もオープンし、次なる鶴雅グループのステージに皆さんは立たれております。次の五十年を作られていく喜びとその苦労に対し、微力ながら私もお手伝いをさせていただければと思っております。